えすのおと

16歳の現役高校生 “えす” のブログ。

【私小説】相変わらず見えない未来。


f:id:Sakurachannel0530:20180315002706j:plain

【スポンサーリンク】
 

 

 

まただ。また、ここから始まる。

 

また私は、ベッドで仰向けになっていた。

 

前にもこんなことがあった気がする。

 

思い返せば、ほんのつい1週間前の話ではないか。

 

ある意味、いつも通りの日常だ。

 

 

昼下がり。ベッドの上。

 

布団の温かみに包まれた足先とは裏腹に、身体は部屋の冷気を感じていた。

 

ぼんやりと浮かぶ天井が、押し迫るように私に憂鬱を与える。

 

なんでいつも、ここから始まるのだろう。

 

天井との、絶妙な距離感。

 

ベッドの上の、浮遊感。

 

ここはもはや、憂鬱の温床としか言い様がない。

 

また、ここから始まる。

 

 

 

人間には、未来が見えない。

 

誰もが抱くタイムマシンへの憧れは、ただの好奇心だろうか。

 

私はそうは思わない。

 

そこには、見えない未来への不安がある。

 

どう足掻いたって見えない。それが未来。

 

そこが人生の醍醐味とでも言うのだろうか。

 

そのスリリングさを楽しむものなのだろうか。

 

見えない未来に向かわねばならないのだろうか。

 

 

ベッドの上。そんなことが頭の中で延々と流れていく。

 

相変わらず視界には、ぼんやりとした天井しか映らない。

 

 

 

 

 

「高校には行こうと思ってるの?」

 

 

西日が少し差し込む部屋の中。男がそう語りかける。

 

それは、1年前の話。

 

私は不登校児の相談センターのような場所に連れて行かれた。

 

そこにはたくさんのプレイルームが存在しており、

職員と一緒に遊んで緊張を解き、そして今後についての相談をするという、

純粋なる子供を巧妙に操る可笑しい施設だった。

 

そんな場所に、何度も足を運んでいた。

 

 

その日もいつものように、卓球部屋に向かった。

 

いつものように、どこか薄暗く映る廊下を通って。

 

いつものように、その閉鎖感に息苦しさを感じながら。

 

いつものように、足を踏み外した、あのときの自分を恨みながら。

 

 

そしていつものように、曖昧に答えた。

 

 

「まぁ、行けるなら行った方がいいかなって感じです。」

 

 

 

 

 

あれから1年。

 

高校に通い始め、少し前進したように見えた自分という名の駒は、

死んだようにピタリと動きを止めた。

 

 

私は未来を見ていない。

 

未来を見ている余裕など無い。

 

今の自分はただ、今の自分を生きているだけ。

 

 

1年前に綴った言葉だ。

 

私は結局、あの頃から1歩も進んでいない。

 

進んだように見えた駒は、今はもう、あの頃と同じ場所にある。

 

 

 

この世界は、停滞を許してくれないのだろうか。

 

1秒前は即座に過去と化し、私を無理やり未来へと押し出す。

 

まるで、私を急かすかのように。

 

未来が、不気味な笑みを浮かべながら私を迎える。

 

そこに希望という二文字は特に見当たらない。

 

どちらかと言えば絶望だが、かと言ってそうでもないのかもしれない。

 

 

人間には、未来が見えない。

 

 

どう努力しようと、未来は見えない。

 

なのに人間は、その見えない未来に対して、決断を下さねばならない。

 

人間が人間である限り、そこからは逃れられない。

 

凄まじいスピードで、選択肢が襲ってくる。

 

休もうとすればするほど、それは加速して、私の目の前に立ちはだかる。

 

 

やはり、常にペダルを漕ぎ続けねばならないのだろうか。

 

そうだとしたら、この世界は本当に面倒だなぁと思う。

 

 

【スポンサーリンク】
 

 

 

目に映るのは、ぼんやりとした天井。

 

いつも通り。相変わらずの景色。

 

少し、喉の渇きを感じた。

 

そうして私は、いつものように水を喉に通し、

また無理やりに、1秒だけ未来へと押し出される。

 

 

本当に相変わらずだ。

 

相変わらず私には、未来が見えない。

 

 

 

 

 

☆高校生 “えす” の私小説 Episode1 はこちら。

 

 

最後までご覧頂きありがとうございました。

 

 

 

※この物語は小説のくせに ほぼほぼノンフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空ではなく、実在のものと関係があります。